番外編 04.37






別にかたまって食べる習慣も自分には無く、ユーリは一人で昼食を摂っていた。



「エーリルちゃん」


――――?
その変な呼び名がした方へと、食べてる昼食から顔を上げると、一つ向こうのテーブルでエーリルが立ったまま何かを持って固まっていた。
そのまま彼女から視線を少し右にずらせば、


(三人か。あいつらが呼んだのか?『エーリルちゃん』)


見える範囲には男の隊員が三人。人で遮られてハッキリとは確認できない。
遠目に見れば、彼女は引き攣りそうな顔をどうやら必死になって笑顔で隠そうと努力していて―――
エーリルと長い付き合いがあるユーリには、そう映った。


(困ってんな)


何を言われているかはハッキリと耳に届かない。
だが、彼女の心情はユーリには手に取れる。


(助けてやるか)


立ち上がる為腰に力を入れたが、ちょっと待てよ―――思い止まる。


(隠し事してたアイツにはちょーどいい罰かもな。これは)


ユーリは薄ら笑いをし、食事をしながら観察する事にした。



今までも、思い出すにも忘れて思い出せない程度だが、あった。こんなエーリルは。
人に選って拒絶心を感じる事があるらしく、彼女曰く、

『生理的にダメなの。なんかゾワゾワ〜ってするの。理由は無いの。なんかダメなの』

らしい。

そんな時に自分が隣に居れば、彼女は決まって自分の背後に身を隠すよう避難し、『ゾワゾワ』の気分がエスカレートすると自分の腕を力一杯掴んできて離さず、かと言って逃げ出しもせず耐え忍んでいた。



(逃げねぇからな、アイツ)


今回もエーリルは逃げる事無い(逃げたそうにしてるが)。席を後にして戻って来ると声を掛けてきた三人の輪の中に入っていく。


(……………)


隊員達と話している彼女は拒絶心を振り切ったのか押さえ込んだのか。問題無く隊員達と話していた。


(平気そうだな)

若干面白くない――



助けを求めるサインをエーリルが出せば、すぐ助けに行こうと思ってたユーリだったが―――


(昼寝でもするか)


皿に残ってる栄養をさっさと腹に流し込む。席を立ちトレーをカウンターに戻すのに扉へ向かうフレンとすれ違うが、お互い目も合わすことなく通り過ぎた。

の、はずだが―――、

ユーリはフレンを視界に入れると、エーリルが気になって忘れかけていた感情と原因を思い出し――



不機嫌の見本と呼ばれても否定出来ない顔つきとなって、食堂から出て行ったのであった。





04.37 --





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